「色彩と質感の地理学ー日本と画材をめぐって 」中村ケンゴ×三木学×岩泉 慧(1)

「色彩と質感の地理学-日本と画材をめぐって 」(1)

日本の画材の魅力とは?環境と知覚に基づいた、芸術と文化における色彩と質感の問題をさまざまな角度から考察します。

<日時>
2017年4月29日(土)14:00~16:00
<場所>
画材ラボPIGMENT(東京都品川区東品川2-5-5 TERRADA Harbor Oneビル 1F)
<企画>
中村 ケンゴ
<主催>
PIGMENT
<登壇者>
中村 ケンゴ(美術家)× 三木 学(文筆家、編集者、色彩研究者、ソフトウェアプランナー他)× 岩泉 慧(PIGMENTラボ所長、画材エキスパート、京都造形芸術大学 講師、美術家)

<はじめに>
絵画は色彩だけではなく、質感も視覚心理に働きかける重要な要素です。特に日本は、西洋圏に比べて質感に関する感性が豊かな文化だと言われています。PIGMENT(ピグモン)の壁面に色鮮やかに並べられた主に日本画で使われている顔料は、もともと鉱物が原料になっています。そのため「岩絵具」と言われており、光輝性を持った独特な質感があります。こうした岩絵具をはじめ、和紙などの日本で使われてきた画材の魅力とは何でしょうか? そして現代芸術においてどのような価値があるのでしょうか?

美術大学や国内の美術業界における「日本画」の議論では、その特性について国際的な価値を説明するのが困難になっています。一方で、ニュートンから始まる近代の色彩理論だけでも、各地域で異なる色彩感覚や質感、配色体系についてすべてを論じることはできません。わたしたちは、環境、知覚、認知、言語の絶え間ないフィードバッグによって文化圏特有の「色彩感覚」「質感感覚」を醸成しており、画材にもそれは息づいています。

今回のトークイベントでは、企画者の中村ケンゴを聞き手に、ソフト開発、デジタル技術を駆使しながらその謎に迫る色彩研究者、三木学を迎え、PIGMENTラボ所長であり、画材エキスパート岩泉慧の知見を仰ぎながら、文化を国境線で区切ることなく、地理的、風土的な意味での日本の画材に潜む色彩・質感感覚について考えます。また、美術の問題だけにとどまらず、近年の認知科学の発展に伴う自動車、化粧品、ファッションまでを射程に入れた色彩・質感研究の現在にも迫ります。素材と感性、両面からの普遍的な議論を通して、日本の画材を狭義の「日本画」から解放してこそ、その魅力を世界に向けて伝えることができるのではないでしょうか。

目次
イベント概要
登壇者の紹介/中村ケンゴによる問題提起
「フランスの色景」と絵画の色彩分析
西洋と比較における日本人の色彩と質感の感覚
なぜ日本の芸術大学では色彩学をきちんと教えないか
風土による視覚の感覚の違い。地域と移動の問題
画材の特性の観点から見る色彩の地理学
認知科学からのアプローチ。質感を醸成する重要なファクターとしての語彙の問題
質感に関する研究について
産業界との関連(自動車や化粧品業界などにおける色彩の研究&ファッション)
まとめ

※トークイベントの記録を随時アップしていきます。

初出「色彩と質感の地理学-日本と画材をめぐって」『芸術色彩研究会』2017年。

 <芸術色彩研究会(芸色研)>
芸術色彩研究会(芸色研)は、芸術表現における色彩の研究を、狭義の色彩学に留まらず、言語学や人類学、科学、工学、認知科学など様々なアプローチから行います。そして、色彩から芸術表現の奥にある感覚や認知、感性を読み解き、実践的な創作や批評に活かすことを目指します。
ここで指す色彩は、顔料や染料、あるいはコンピュータなどの色材や画材だけではなく、脳における色彩情報処理、また素材を把握し、質感をもたらす要素としての色彩、あるいは気候や照明環境など、認知と感性に大きな影響を及ぼす色彩環境を含むものです。それは芸術史を、環境と感覚の相互作用の観点から読み直すことにもなるでしょう。
http://geishikiken.info/

三木 学
評者: (MIKI Manabu)

文筆家、編集者、色彩研究者、美術評論家、ソフトウェアプランナーほか。
独自のイメージ研究を基に、現代アート・建築・写真・色彩・音楽などのジャンル、書籍・空間・ソフトウェアなどメディアを横断した著述・編集を行なっている。
共編著に『大大阪モダン建築』(2007)『フランスの色景』(2014)、『新・大阪モダン建築』(2019、すべて青幻舎)、『キュラトリアル・ターン』(昭和堂、2020)など。展示・キュレーションに「アーティストの虹─色景」『あいちトリエンナーレ2016』(愛知県美術館、2016)、「ニュー・ファンタスマゴリア」(京都芸術センター、2017)など。ソフトウェア企画に、『Feelimage Analyzer』(ビバコンピュータ株式会社、マイクロソフト・イノベーションアワード2008、IPAソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー2009受賞)、『PhotoMusic』(クラウド・テン株式会社)、『mupic』(株式会社ディーバ)など。
美術評論家連盟会員、日本色彩学会会員、大阪府万博記念公園運営審議委員。

Manabu Miki is a writer, editor, researcher, and software planner. Through his unique research into image and colour, he has worked in writing and editing within and across genres such as contemporary art, architecture, photography and music, while creating exhibitions and developing software.
His co-edited books include ”Dai-Osaka Modern Architecture ”(2007, Seigensha), ”Colorscape de France”(2014, Seigensha), ”Modern Architecture in Osaka 1945-1973” (2019, Seigensha) and ”Reimaging Curation” (2020, Showado). His recent exhibitions and curatorial projects include “A Rainbow of Artists: The Aichi Triennale Colorscape”, Aichi Triennale 2016 (Aichi Prefectural Museum of Art, 2016) and “New Phantasmagoria” (Kyoto Art Center, 2017). His software projects include ”Feelimage Analyzer ”(VIVA Computer Inc., Microsoft Innovation Award 2008, IPA Software Product of the Year 2009), ”PhotoMusic ”(Cloud10 Corporation), and ”mupic” (DIVA Co., Ltd.).
http://geishikiken.info/

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