ダリのシュールな絵の中に入る夢が現実に!角川武蔵野ミュージアムの劇場「サルバドール・ダリ」体験記

ダリのシュールな絵の中に入ってみたいと思ったことはありませんか?
私はあります!そしてその願望が叶う場所が今、東所沢の地に開かれています。
その場所とは、角川武蔵野ミュージアム。このミュージアムは、たたずまいがそもそもシュールなので、ぴったりの場所。360度巨大映像空間に没入する体感型デジタルアート劇場「サルバドール・ダリ ―エンドレス・エニグマ 永遠の謎―」が開催されているのです。会期:2023年12月20日[水]〜2024年05月31日[金]

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サルバドール・ダリは、スペイン生まれ。幻想的で非現実的な独自の内面世界を写実的技法によって克明に描き出し、20世紀を代表する芸術家となった人ですが、その言動もかなり奇抜。ピンと跳ね上がった口ひげや、シュール(シュルレアリスム)な絵を記憶に刻んでいる方も多いのではないでしょうか。

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体感型デジタルアート劇場「サルバドール・ダリ」に入ると、さながらダリの絵の中にポーンと放り込まれた感覚。溶けていく時計や、荒れた海に浮かぶヌードや、胴体にテレビがついた巨大な動物が動く空間をさまよい歩く旅人になったみたいです。

このダリの世界にどっぷり使っているうちに、「こんなに摩訶不思議な世界を、これほど現実のように感じられるのは、ダリの絵が超絶上手いからだ!」と気がつきました。改めて、ダリはぶっ飛んだ発想を持っていただけではなく、「画力も凄まじかったのだ」ということが分かって感動~。会場に鳴り響くピンクフロイドの音楽がさらにその感動の高揚感を高めてくれました。そんなダリの世界の不思議な名場面をいくつかご紹介します。

【第2幕カダケス/Cadaques】
美しい風景の中に現れるにょきっとした巨大な首。ぎょっとするけど話しかけたら意外と答えてくれそうな顔をしていますね。描かれた場所は、スペイン南東部の地中海に面した小さな村・カダケスです。ダリが「世界で最も美しい場所」と評し、若い時に様々な表現に挑戦した場所でもあるそうです。
そこに突拍子もなく描かれた首は、シュルレアリスムを予兆しているようでもありますが、顔の描き方はとても緻密で立体的。ラファエロら巨匠をお手本に磨いた画力をバッチリ発揮しています。
流れる音楽は、Pink Floyd の”Shine On You Crazy Diamond(Pts.1-5)”。

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【第5幕召喚/Evocations】
わ~、地球創世記の荒波に翻弄される!
そんな迫力とリアル感で迫ってきたのが、第5幕です。
稲妻、荒波、洪水に飲み込まれていく~!
これはもはや絵ではなく現実。驚愕する私たちの目の前に現れたのは、クールな表情で神のようにこの世界をクリエイトし続ける画家ダリの姿でした。
流れる音楽は、Pink Floydの”Atom Heart Mother”。

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【第8幕シュルレアリスム初期/ThefirstSurrealism】
出ました!シュルレアリスムの萌芽。
見てください。スーパーリアルな岩山に、茹でたインゲンの豆?のような怪物が登場しました。

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【第9幕ダブル・イメージ/Doubleimages】
ダリがシュルレアリスム的手法として提案した1つの方法が「ダブル・イメージ」。
ダブル・イメージを簡単に説明すると、1つの絵が岩にも見えるし人の顔にも見えるというものです。第9幕は、ダリによって描かれた、ありとあらゆるダブル・イメージが登場します。でもダリの想像力は無限に広がり、ダブル・イメージどころか、トリプル・イメージ、クワトロ・イメージ、マルチ・イメージと、イメージの洪水に圧倒されます!

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いかがでしたでしょうか?モチーフはとびきり独創的ですが、伝統的な画法をしっかりとマスターしていたダリの絵の世界は、意外と斬新さと保守性が入り混じっています。そのことは、資料展示エリアにあったダリの採点表からも見て取れます。

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ラファエロやフェルメールなど過去の巨匠を高く評価する一方、モンドリアンやピカソなど同時代のアーティストに対しては辛口。このストレートな分かりやすさもなんだかキュート!

ダリの絵ってちょっと不穏で近寄りがたいと思っていた方も、もともと好きだった方も、このダリ劇場に来たら夢中になるのではないでしょうか。自由に歩き回っていろいろなところに座ったりできるのも満喫できるポイントです。卵の中に入って撮影できるフォトスポットも楽しいですよ。

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父の81歳の誕生日プレゼントとしてこのダリ劇場を一緒に訪れたところ喜んでくれました。ノリノリで口ひげポーズ!

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ランチには、角川武蔵野ミュージアム5階の「SACULA DINER」もおすすめです。私は、国産豚100%のこだわりハンバーグをいただきました。黒と白のハンバーグ2,000円(税込)美味しかったですよ!

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【各幕タイトル】
第1幕 プロローグ/Prologue
第2幕 カダケス/Cadaqués
第3幕 劇場美術館/The Theatre-Museum
第4幕 偏執狂的・批判的方法/Paranoiac-Critical Method
第5幕 召喚/Evocations
第6幕 ジュエリーとメイウェスト/Jewelery and Mae West
第7幕 映画と写真/Cinema and photography
第8幕 シュルレアリスム初期/The first Surrealism
第9幕 ダブル・イメージ/Double images
第10幕 原子核神秘主義/Nuclear Mysticism
第11幕 キリストとガラ/Christ and Gala
第12幕 新しい古典/The Neoclassic

【展覧会概要】
展覧会タイトル:サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎 ―
英語タイトル:Salvador Dali – Endless Enigma
会場:角川武蔵野ミュージアム1階 グランドギャラリー
開催期間 2023年12月20日[水] 〜 2024年05月31日[金]
チケット価格(税込):
●オンライン購入(https://tix.kadcul.com/)、当日窓口購入
一般(大学生以上):2,500円/中高生:2,000円/小学生:1,300円/未就学児:無料

Creative Direction: Gianfranco Iannuzzi
Created by Gianfranco Iannuzzi Renato Gatto
Massimiliano Siccardi
KCM Editing: Rino Tagliafierro
Production: Culturespaces Digital ®
©角川武蔵野ミュージアム

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評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

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