不思議な形に会いに行ったDOMANI展☀️あれはどこでもないどこかだったのかもしれない

ここ8年ほど、毎回足を運んでいる「DOMANI・明日展」。
今年秋ごろから予告のポスターを見かけるようになったのだが、 私はそこに載っているなんとも不思議な形をした作品のとりこになってしまった。
12月のある日、 ついに対面することができたのだが。。。
その出会いはいかに?
「DOMANI・明日展 2022–23」@国立新美術館の余韻が鮮明なうちに伝えよう!

巨大なバナーをくぐるとそこは。。。

漫画の世界?!
いつもの感覚からすると、ザ・現代アートといった趣の作品が現れるかと思っていたのでちょっと戸惑う。
等身大のニューヨーク生活を切り取ったエッセイコミックが人気の近藤聡乃さんの作品。
食べ物がやたら美味しそうに描かれている!

進むと一転。

すーっと涼しくなる巨大な氷河の写真群が!
フィンランドで撮影した石塚元太良さんの作品。
意志を持って彫られたような氷河、万里の長城もびっくりするように広がる氷河の壁。
自然には自然独自の世界があるのだなと実感。
人間界とは違う色と時間の流れを感じる。

そして、身のまわりにあふれる日用品や風景をコラージュして、 切り取られた文脈が散りばめられた池崎拓也さんの部屋を通り。。。

次の部屋では、美しく透明感のある絵が際限なく溶け続ける。
新感覚の儚くも美しい大﨑のぶゆきさんの世界!

すると丸山直文さんの作品たちも、水の効果で無数の色が優しく混じり合っている。
下地材を施していないカンヴァスに水を引き、絵具をにじませていくという方法で描いているらしい。

こんな感じで、形や境界があいまいな浮遊感が徐々に高まったところで、「きたー!」
夢にまで見たあの「形」さん。

いいねー!期待を裏切らないナゾぶりにうっとり!
伊藤誠さんの彫刻です♪
背の高さも、厚みも、色も、すりガラスのような質感もいいな!
手はつなげないけど、一緒に歩こう♪

あー、 遠くの方に小さく見える「形」さんがまたあどけなくて好き♪

「形」さんに別れを告げた先には、柔らかい座布団のような石の彫刻が!
触っても良いと言うので、ナデナデ。北川太郎さんの作品。

次に出会ったのは、 すっとんきょうなアヒル2羽。
アニメーションのように見えたけど、しゃべっているのは作家さんの口。
アヒルのような語り口ではなく、ごく普通の男性としてしゃべっているのが意外。
これを制作した黒田大スケさんは、彫刻家とのことなので、この作品とのギャップがミステリアス。

そのまま進むと、今度は、様々な人間の体のパーツが一度バラされてから針金で串刺しにしたようなこれまたシュールな彫刻群に囲まれる。
谷中佑輔さんは、彫刻とパフォーマンスで提示する作家とのことなので、パフォーマンスも一緒に見てみたい。

向こうの方からざざざざっと大きな音が聞こえてくるので向かうと、巨大画面の中で、手が画用紙に色を擦り付けている音だった。自分がノミになって、色を塗っている人間の手を間近に見ているような感覚。小金沢健人さんの作品。

不思議な「形」さんとの体面をハイライトに駆け抜けた「DOMANI・明日展」。充実感とともに、 とてつもない浮遊感が余韻として続く。
この浮遊感はなんだろう?
どの作品も、 境界や形を限りなく薄めてくるようなパワーがあった。
こういう、 薄めてくるパワーってなかなかない!
そういえばこの展覧会の図録に、 沢山遼さんが「緩衝地帯」という評論を書いていた。「ウクライナはその広大な国土自体が境界線である」からはじまり、 絵画はそれ自体が巨大な境界であり、緩衝地帯である」 で結ばれる壮大な評論。

25回目となるこの「DOMANI・明日展」は、 現タイトルでの展覧会は今回で最後になるとのこと。 もしかして、 この展覧会も「緩衝地帯」だったのかもしれない!

【「DOMANI・明日展」開催概要】
会期:2022年11月19日(土)~2023年1月29日(日) 49日間開催
休館日:毎週火曜日、年末年始 2022年12月27日(火)~2023年1月11日(水)
開館時間:午前10時~午後6時 ※毎週金曜日は午後8時まで(入場は閉館の30分前まで)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
主催:#文化庁、国立新美術館
協賛:公益財団法人 福武財団、日本美術家連盟、損害保険ジャパン、サンエムカラー
協力:日本航空、東京スタデオ、カトーレック、フレームマン、CG-ARTS
シュウゴアーツ、ミヅマアートギャラリー、ユカ・ツルノ・ギャラリー
KOTARO NUKAGA、Satoko Oe Contemporary
ヴァンジ彫刻庭園美術館、なら歴史芸術文化村
亜紀書房
キュレーション:#林洋子(文化庁芸術文化調査官)
企画協力:#沢山遼(美術評論、2021年度(1年研修)・アメリカ(ニューヨーク))
展示協力:室屋泰三(国立新美術館 メディア企画室長)
カタログ編集:内田 伸一
アート・ディレクション:榊原 健祐(Iroha Design)
制作:アート・ベンチャー・オフィス ショウ
観覧料(税込):一般 1,000円(800円)、大学生 500円(300円)

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評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

https://patronproject.jimdofree.com/

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