年間400万円で社員にもアーティストにも絶大なポジティブ効果👑マネックスグループ の費用化できるアートプログラムとは?

日本の社員向けアートプロジェクトとして先駆的な「ART IN THE OFFICE」は、マネックスグループの松本大社長が2008年に立ち上げたものです。
なんと、2022年で15年目!
「ART IN THE OFFICE」では、毎年公募で選ばれたアーティストがオフィスに何度も通いながら、プレスルームの壁一面にアートを制作します。制作期間中はアーティストが社員向けのワークショップを開催し、制作中の部屋に社員が自由に出入りして交流することも可能とのこと。
「アート思考」のアの字もなかった2008年には 画期的なプロジェクトだったのではないでしょうか。でもその後、それほど導入している会社が増えているわけではないことを考えると、やはり今でも画期的。
しかも、実は、費用化できるという意味で、経営的にも嬉しいアートプロジェクトなのです。さすが、マネーのプロである松本社長のアイデア!
詳細は、『国際商業』連載「アート×ビジネスの交差点」〈6月号・Vol.36〉に掲載されていますが、 ここではハイライトをダイジェストでお伝えいたします。

メディア取材は、 いつもこのプレスルームで実施されます。 円筒状のガラス貼りのスペースに壁一面に広がるのは、年に一度、現代アーティストによって描き変えられる壁画。

1.最初は社員の反応が冷たかったものの。。。

菊池麻衣子(「パトロンプロジェクト」代表):「ART IN THE OFFICE」を続けてこられて感じていらっしゃる変化はありますか?

松本大さん(マネックスグループ株式会社代表執行役社長CEO):始めた当初は、 「何でこんなことをやるのだろう」という感じで社員の反応が冷たくて大変でした(笑)。でも、毎年違うアーティストにオフィスのプレスルームにて作品制作をしてもらいながら社員と交流してもらうことで、4~5年目には社内で拒絶するような反応はなくなりました。今では楽しみにしている社員も増えてきました。

コーポレートコミュニケーション室の山口祐樹さん:社員にアンケートをとりましたところ、 「ブランディングに効果的」「オフィスに彩りを添える」「多様なアーティストが考えたワークショップから刺激を得られる」などという感想が聞かれました。また「部署を超えて集える」「外国籍の社員と交流できる」とコミュニケーションの点からも好意的に捉えられているようです。

2. アスリートや小説家など、美術外の分野でご活躍されている方も審査員に

菊池: 審査員は、 松本さんも含めて毎年5名ですが、 キュレーターやギャラリストなどのいわゆる美術の専門家が3名と、実業家やアスリートや小説家など美術外の分野でご活躍されている方が1名という構成ですね。

松本さん:そうです。毎年、私とAITの塩見さん以外、顔ぶれが変わるのですが、美術の専門ではない方に一人入って頂くというのが意外と重要なのです。自社にアートを取り入れた実業家の方々や、、フェンシング選手の太田雄貴さんや小説家の林真理子さんなど、美術界の外側からの何気ないささやきが審査の過程を通して歴代選出作品に多様性をもたらしたと思います。おかげで、「前回は興味なかったけど、今年の作品は面白そう」と関心を持ち、ワークショップに参加する社員が少しずつ入れ替わるなど、多様なテイストに響くラインナップを実現できています。

菊池:確かに、イカを素材に用いて巨大なイカリングを描いた宮内裕賀さんの作品などは、その意外さと独自の生命観が、「典型的なアート」のイメージを超越していて面白いですね。

宮内裕賀さんのイカリング

コーポレートコミュニケーション室の山口さん:かたや、アートの専門家が毎回入ってくださっているおかげで、伸び代の大きなアーティストたちを、まだ世の中に知られる前に選出できているという実績もあります。例えば、今年VOCA展2022の大賞である「VOCA賞」を受賞した川内理香子さんは、まだ学生だった8年前に選出させていただきました。

Q プレスルームから出た右側のスペースに、川内さんのお寿司の作品がスタイリッシュに飾られていますね。「食べ物」というテーマは同じでも現在の彼女の画風と全然違うので驚きです。

マネックスグループのオフィスに展示してある川内理香子さんのお寿司の絵。
VOCA展2022の大賞である「VOCA賞」を受賞した川内理香子さんの絵

3. 「ART IN THE OFFICE」は、「費用化できる」サステナブルなアートプロジェクト

松本さん:「ART IN THE OFFICE」を参考にしたいということで見学にいらっしゃる会社もありましたが、 導入までには至らなかったようです。

菊池:やはり、いざ会社で実施するとなるとハードルが高いのでしょうか?

松本さん:ドーンと大きく立ち上げようとしてしまうからだと思います。 小さく始めて「続けていく」 ことが大事だと思います。例えば、「ART IN THE OFFICE」は比較的低予算で実施できています。
2008年当時は200万円でスタートしましたが、現在でもコストは400万円くらいです。
公募の告知、 賞金、 審査員へのお支払い、 アーティストの制作費、 レセプションの開催費(1年で作品を入れ変えるので)壁の原状回復費、など全て込みでそのくらいです。
その上、 「ART IN THE OFFICE」は社員研修という位置づけですので、 監査法人から「経費」として認められます。 何か買って資産になるわけでもありませんし、「費用化できる」という点で、サステナブルなのです。だからこそ続けてこられたとも言えます。
ですので、このプロジェクトの運営協力を得ているNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]の塩見 有子さんとも、もっとたくさんの企業にこの取組みを広めたいねといつもお話ししています。

菊池:なんと素晴らしい!!! 社員研修ご担当の皆さん、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか!!!

⇒続きは雑誌またはwebにて⇒
【出典】『国際商業』アート×ビジネスの交差点☆ファシリテーターはパトロンプロジェクトの菊池麻衣子化粧品業界専門の月刊誌『国際商業』で「アートとビジネス」について語る連載第36回
アートとビジネス記事の続きはこちらへ~(途中から有料です)
『国際商業』WEB版⇒

アート×ビジネスの交差点(36)社員の思考を変えた「ART IN THE OFFICE」の先駆者


☆『国際商業』は大手書店にて販売しています。
☆この連載は2022年秋に電子書籍化される予定です。

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評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

https://patronproject.jimdofree.com/

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