一握りの天才を見出していくTERRADA ART AWARD👑今年の5組が表した世界とは?

「TERRADA ART AWARD 2021」のファイナリスト5組が空間演出した展覧会を体感しました。

国内外1,346組の応募から選ばれた今年の天才5組が表した世界とは?
ずばり言うと「『あいまい』な世界」!そして、「その『あいまい』がじわっと浸食されていくことで新しく出現する何か」を感じました。

持田敦子、山内祥太、川内理香子、久保ガエタン、スクリプカリウ落合安奈の作品を一緒に見ていきましょう。みなさんは、何を感じますか?

持田敦子

展示風景より、持田敦子《Steps》(2021)

まず、近づくと、衝動的な反応として「上ろう」としてしまう作品が、持田敦子の《Steps》。

上れそうで上れない。 上ったらどこかにたどり着けそうだけどどこにもたどり着かない。 建物の一部に見えるけどそうでもないかもしれない。
そんな「あいまい」な存在だけど、存在感抜群。 そして役に立たなそうだけどあるのもいいなと思わせる存在。
「性差や役割や国境があいまいなのもありだよね〜」などなど、包容力あふれるおおらかな声が聞こえるような気もする作品です。
※現在はルールが変わり、6段目まで上れることになりました。

山内祥太

展示風景より、山内祥太《舞姫》(2021)

人間とテクノロジーの境界が衝撃的に曖昧になっている作品。
何しろ人間とテクノロジーが恋愛関係にあるのです。 両者はピンクのケーブルで繋がり、肉体関係まで結んだかのような親密感が表現されています! どうやって?ぜひ会場で目撃ください!※パフォーマーが演じる時間帯だとより生々しく伝わってきます。
私はこのパフォーマンスを見ながら、「美女と野獣」を思い出しましたが皆さんはどうでしょう? 「美女と野獣」も種を超えた恋愛模様ですが、ロマンチックに美化されていたのに対し、こちらはより生々しくて現実的。
ゴリラの鼻息がこちらにまで届きそうな情熱です。
AI をお嫁さんに迎えた男性の体験記を読んだことがあるけど、人間とテクノロジーの境界が曖昧になるにつれて、人間同士の恋愛よりも豊かなバリエーションが生まれるのかもしれないと思わせる作品。

川内理香子

展示風景より、川内理香子の作品群

「コロナウイルスによって、自身の身体や、自分が保有するものへの意識、その境目の曖昧さが顕著になった。」と言う川内理香子。
彼女の展示空間も、立体なのか、線なのか、平面なのか、その境界が曖昧だからこそ全体に温かい血が流れて一つの作品になっている。
特にペインティングは、内と外の境目のなさが暗喩される「神話」をモチーフにしたとのこと。
筆者には、横長の作品にシカが見えたので 「このシカも神話の一場面に出てくるのですか?」と聞くと、「これはトラです」とのこと。。。早とちりでトンチンカンなことを聞いてしまった!スミマセン!!
でも、何度も見返すのだけどどうしてもシカにしか見えない。。。しかし、きっとそこはポイントではないのです!
「トラは神話の中であらゆる重要な場面に登場します。 人類に初めて火をもたらしたのはトラです。」と語る彼女が、神話の中でも特に虎に注目して様々な意味を込めで描いたということがポイントなのではないでしょうか。描かれたトラは、風景や他の動物と混じり合い、「あいまい」な存在としてその身体を無限に広げているのです。

絵の中のトラとのツーショットに応じてくれた川内理香子さん。

久保ガエタン

展示風景より、久保ガエタンの作品群

「天王洲の海で音を流してクジラを呼ぶ」というプランを作品にした久保ガエタン。古今東西のクジラや海にまつわる、膨大な量の逸話や画像が流れてくる空間です。
その空間にしばしたたずんでいると、運河に囲まれている天王洲という場所の、海にもなれるし土地にもなれるという「あいまい」な存在感がより意識されるようになりました。 また、クジラがどこの国の領海ともしれない場所から、 時空を超えてこの天王洲にやってくるイメージをインスパイアされて、様々な国の歴史が、クジラによって地続きになる感覚を体験。
国境という概念の「あいまい」さにも思いを馳せました。
そういえば、コロナウイルスパンデミックも、全ての国境を軽々と越えて広まった。。。

展示風景より、久保ガエタンの作品群には、アマビエのようなクジラ?の姿も!

スクリプカリウ落合安奈

展示風景より、スクリプカリウ落合安奈《骨を、うめる – one’s final home》(2019-21)

2019年にベトナムのホイアンで江戸時代の日本人の墓に出会ったことからビデオインスタレーション作品の第一章が生まれ、受賞作品は、最終章となる第三章とのこと。
墓の主は鎖国政策によりベトナムの婚約者との仲を引き裂かれたものの海を越えて会いに行く姿が言い伝えとして残されているそうです。 私たちは「ベトナムの海」と「日本の海」の映像とサウンドに囲まれ、人工的に作られた国策や境界を超えていく「個人の思い」に没入していきます。
そして、当時、絶対的に日本と海外の国々を隔てていた「鎖国」はもうないし、だいたい領海を決めても、水や生き物や「個人の思い」などは、関係なく行き来していることにふと気づいたり。 彼女の作品からもまたこういった境界の「あいまい」さが浮かび上がってきました。

みなさん、いかがでしたか?私は全部見終わって、この5組の作品同士の境界も「あいまい」に感じてきました。実は、全部合わせて1つの作品なのでは?なんて思いながら、再度会場を旅してみるのも良いかもです。

何度か展示会場を巡っていると、このたぐいまれな才能を持った彼らと、意外と自分も同じ感覚を体験していることに気が付いて驚きます。
でも、彼らはその体験をやり過ごしてしまうのではなく、伝えるためのアイデアを閃かせ、他の人々が感知できるようなアウトプットへに転換するスキルを持っているのです!

ぜひ、彼らと同時代感覚をシェアできる、「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」に出かけてみませんか?!

TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展概要】
会期:2021年12月10日〜23日
会場:寺田倉庫 G3-6F
住所:東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号
開館時間:11:00〜19:00 ※最終入館は18:30
料金:無料 ※日時指定予約制
入場予約:https://www.terradaartaward.com/finalist

【最終審査員について】(五十音順・敬称略)
片岡真実(森美術館 館長、国際芸術祭「あいち2022」 芸術監督)
金島隆弘(ACKプログラムディレクター、京都芸術大学客員教授)
寺瀬由紀(アートインテリジェンスグローバル ファウンディングパートナー)
真鍋大度(Rhizomatiks ファウンダー、アーティスト、DJ)
鷲田めるろ(十和田市現代美術館 館長)

※審査員たちによるそれぞれの評はこちらからご覧になれます⇒
https://www.terrada.co.jp/ja/news/11764/

評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

https://patronproject.jimdofree.com/

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