根をはる巨人や砕けちる大岩など、壮大なアートが楽しめる虎ノ門ヒルズ

いつも何気なく通りすぎている場所にもアート作品が街中に数多くあります。そんな街中アート、いわゆるパブリックアート(公共のアート)は、世界レベルで活躍しているアーティストの作品も多いもの。つまり、街自体が大きな美術館みたい! スマホを片手にインスタ映えする写真をもとめて散歩に出かけてみませんか?
初回は、2014年にオープンした虎ノ門ヒルズの壮大なアートをお楽しみください。

 2014年にオープンした地上52階、高さ247mの超高層複合タワー「虎ノ門ヒルズ」。

実はこの虎ノ門ヒルズは、一流のアートを屋内外に設置することで人々とコミュニケーションを豊かにすることにも力を入れています。


虎ノ門ヒルズ外観

一推しは、世界的アーティストによる巨人!

虎ノ門ヒルズ2階のオーバル広場に、ドーンと鎮座する巨大な人型の彫刻《ルーツ》
これはスペインを代表するアーティスト、ジャウメ・プレンサによるアート作品です。


虎ノ門ヒルズのジャウメ・プレンサ《ルーツ》

ジャウメ・プレンサは、世界的に有名な彫刻家です。
世界各地でパブリック・アートを展開し、舞台美術界のアカデミー賞とも言われる、プラハのカドレニアルでゴールドメダルを受賞するなど受賞歴も多数。

ニューヨーク・マディソンスクエアパークの巨大な少女像やカナダ・トロント国際空港の作品などが有名で、日本では瀬戸内海の男木島に船の発着場の作品が親しまれています。

こちらの巨人も、よくよく見ると、文字が見えてきませんか? 実はこれ、日本語、中国語、アラビア語、ヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語、ヒンディー語、ロシア語の8つの言語の文字からできている「人」なのです。


8つの言語の中には、見知った文字も

「言語は国の文化や歴史を表すと考えます。この8つの言語は国際性を表現し、世界の調和の美しさを表しています」とは、プレンサ氏の言葉。平和を強く望むプレンサ氏は、さまざまな言語で世界の多様性を表現しつつ、多様な文化を超えて人間達が平和に共存する状況を象徴する作品を作り続けています。

言葉自体の意味をあまり意識せずとも、それぞれの造形が美しく組み合わさるよう配置することで、違言語や異文化を見事に調和させています。

虎ノ門ヒルズの《ルーツ》の特徴は、作品タイトルの通り木の根っこのような足。かつて見た、熱帯雨林の木々の根が地上に出てきて枝や幹を包み込む様子にインスピレーションを得たとのこと。

プレンサ氏の作品では人型にこのような木の根が出てきたのは、この虎ノ門の作品が世界で初めてなのです。

そして、この彫刻《ルーツ》は、中に入ることもできます!(芝生の養生をしている時期以外)。


《ルーツ》の内側

「現在、世界はストレスに満ちた歴史的瞬間にあります。私は、人々が休める場所を提供したいのです」と語るプレンサ氏は「私の作品は、文字が漂う雲のよう」と詩的な言葉も残しています。

東京の風景と空を背景に超然と佇む巨人には、強烈な吸引力があります。この巨人のふもとでヨガを楽しむ人々や、子供たちが作品に出たり入ったりして走り回る姿も美しいです。


日が落ちてくるとライトアップされて表情を変える《ルーツ》

巨人が立ち上がって夜の街を歩き回る姿を想像すると、昼間とは違ったアートの世界が広がります。

エネルギーがあふれ出る作品

2階のエントランスロビー。受付スタッフの頭上に、銀色の岩が砕け散っています。


ジャンワン《Universe 29》

遠目で見るとわかりづらいのですが、近寄って斜め下から見たり、1つ上の階の向かい側から対面すると、砕け散った銀色の岩が枠をはみ出して飛び出してくる勢いや、宇宙のビッグバンを想像させるエネルギーを感じます。

これは、中国人アーティストのジャン・ワン氏による作品《Universe 29》。

423個のステンレススチール製の岩がパネルに配されています。爆発的なエネルギーを感じませんか?制作過程を知るとその理由がわかります。

なんと、自然から採取してきた大きな岩を約10mの高さから落としています。その砕け散った岩の破片の位置を全て正確に記録。その後、岩の破片423個をステンレススチールで模り研磨し、パネルの上で砕け散った様子を再現しました。

ジャン・ワン氏はこのダイナミックな空間にあう作品をと本作品をこの場所のために作品を制作しました。このようにある特定の場所のための作品を現代アート用語で「サイトスペシフィック」と言います。虎ノ門ヒルズのアートは全てサイトスペシフィックですが、このジャン・ワン氏の作品は虎ノ門ヒルズから発信されるエネルギーを見事に表現しています。

岩肌や銀の輝き、パネルからのはみ出してくるエネルギーも感じてみてください。

長い壁面を活用したアート

同じく2階と3階のエレベーターホール前ガラス壁面から天井に流れる模様もアート。


サン・クワァク《Untying Space-Toranomon Hills Tower》

 江戸時代に虎ノ門に流れていた川やお濠の水から発想をふくらませた作品で、その川の流れが現代に通じ、虎ノ門を行きかう人々のアイデアやエネルギーの流れに繋がるイメージとのこと。

1階の車寄せに面した通路には、日本人アーティスト内海聖史氏の作品《あたらしい水》。



内海聖史《あたらしい水》

横幅5mを超える大作計5枚なので、合わせると全長約27m。油彩でじっくり描いた力作は、様々なドットの色で四季を表しています。
「四季なのに5枚の絵」、「全長が長すぎて5枚一度に見られる角度がない」、「何重にも重なる鏡に映し出されて迷宮に入り込んだような感覚」など、ミステリアスなアート空間でもあります。

自分と内海氏の作品が鏡に映りこむ瞬間を楽しむこともできますよ。

アートデートもいいですね

日が落ちて、ライトアップされた巨人を眺めたら、ちょっと特別な場所に行ってみませんか?

虎ノ門ヒルズ内の高級ホテル・アンダーズ東京の最上階にあるバーへ!


ホテルアンダーズ東京のルーフトップバー

52階を下りると、世界的に有名なジャン=ミシェル・オトニエルの作品が!
ピンクのハートがライトアップされて雰囲気満点です。


ジャン=ミシェル・オトニエル《Kokoro-Ai》

淡いピンク色から赤紫色にグラデーションするガラスの連珠がハート形に弧を描いています。

六本木ヒルズ毛利庭園池に設置され崇高な愛を象徴する《Kin no Kokoro》はご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

六本木ヒルズ毛利庭園池のジャン=ミシェル・オトニエル《Kin no Kokoro》

ピンクの《Kokoro-Ai》は始まったばかりの愛を意味します。

東京を展望し、東京の新たなハート(中心地)となっているとのこと。また、作品の前で様々な誓いや約束が生まれるその瞬間は、永遠の感動と奇跡となるというコンセプトもあるそうですよ。

オトニエル氏のハートに導かれ、夜景の綺麗なバーで食前酒を軽く飲んでからディナーに出かけるデートなんて、ステキですね。

みなさん、壮大なアートを楽しみがてら、アートデートにもぜひ立ち寄ってみてくださいね!

#虎ノ門ヒルズ #ジャウメプレンサ #パブリックアート #ジャンワン #内海聖史 #アンダーズ東京 #ジャンミシェルオトニエル #現代アート #toranomonhills

評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

https://patronproject.jimdofree.com/

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