銀座でNFTアートフェア開催!シンワが仕掛けるメタアートな世界とは?

銀ブラ日和のある冬晴れの日に立ち寄ったのは、銀座7丁目にあるShinwa。アートオークションなどを手掛けるシンワ・ワイズ・ホールディングス傘下のスペースです。「デジタルアート・ウィーク2022」と題してNFT作品のアートフェアを開催すると聞きつけてやってきました。Shinwa Wise Holdingsは、日本のNFTアート業界で先駆けの存在です。今年3月にも、銀座に新しくできたRaiseで、「デジタルアート・ウィーク2022」のメインアーティストである「The Jayder」のオークションを行い、1000万円での落札作品が出るなど好評だったNFTアートフェアです。

イベント会場の中は、かなり照明が落としてあり、発光してうごめく作品の数々が目に入ってきます。デジタルな世界に入ったのだなと感じると同時に、宇宙空間のようでもあります。すると、今展のキュレーターであるWarren Wee(ウォーレン・ウィー)さんが、今回のコンセプトは、NASAが月面基地の建設を目指して2022年11月16日に打ち上げた「アルテミス1号」からインスピレーションを受けて構築した”Shinwa Space Ship”なのだと教えてくれました。さすが、シンガポールをはじめとしてインターナショナルに活躍する30代の若きキュレーター!発想が違いますね。

Shinwa 内観

実は、Shinwa のスペースとそっくりの間取りのバーチャルなスペースがもう一つ作られていて、リアルスペースを観賞すると同時に、バーチャルなギャラリーにもアクセスして探索することができるのでした。バーチャルなギャラリーの方は、宇宙空間の小惑星に着陸したギャラリーとして存在しているのですが、パソコンなどの端末からアバターとして月や惑星が浮かぶ宇宙にあるギャラリーに入ることができます。
要するに、パラレルワールドのようにメタバースギャラリーのShinwa Galleryがあるのですね。慣れてくると、自由に行き来が出来るので、リアルとバーチャルの境界がどんどん薄れていきます。地下1階と1階があり、階段でつながっているところも含めて、造りが同じなのですが、違う作品が展示してあるので、「あれ、さっき見た作品はバーチャルの方だったっけ?」と記憶の中でもリアルとバーチャルが入り交じる感覚が不思議。
このような両空間で、国内外の著名なアーティストと駆け出しのアーティストのNFT作品をアートフェアとして紹介する狙いはどのようなところにあるのでしょうか?シンワ・ワイズ・ホールディングス社長の倉田陽一郎さんや、キュレーターのウォーレンさんと会場を巡りながらお話を伺ってみました。

まず最初に強烈なインパクトを放って登場するのが、フランスのパフォーマンス・アーティストであるORLANの作品です。隈取りをした顔がサイケデリックにいくつも描かれているのですが、近くのQRコードをスキャンすると、彼女自身がARとして飛び出てきてパフォーマンスをします。彼女は、1990年から自身の肉体を使った整形手術の過程を「カーナル・アート(肉的芸術)」として見せていることで世界的に評価されてきたアーティストです。主要な美術館にも作品が所蔵されている実力の持ち主。

ORLANの作品からARが飛び出してくる

ウォーレンさんによると「京劇の仮面とインタラクティブテクノロジーを組み合わせた作品です。歴史的に京劇は女性に禁じられてきましたので、彼女はフェミニストとして、この一連の作品でその事実を解釈しています」とのこと。
そしてなんと70代にして最先端テクノロジーを駆使し、ジェンダー差別や人種差別に疑問を呈するような作品の発表を続けているというのですから、とてつもなくパワフル!
キャンバスに描かれた絵のようなリアル作品と、3Dアバターとして彼女が飛び出してくるARをセットで楽しみながらシリアスなメッセージも受け取れます。
このような作品が一点物のNFTアートとして3,850,000円で販売される時代になったのですね。
銀座の会場にリアルで訪れた方も、世界のどこかからWeb上でメタギャラリーにアクセスした方も、タイムラグなく購入することができるのもメタバーストとNFTアートのコンビならではです。フィジカルな制約や国境といった境界がどんどん薄まってきていると感じます。

それから、日本を代表するCGアーティストである河口洋一郎の作品も目を引きます。
サイエンスをアートに取り込んだCG映像ロボティクスインタラクティブアートの先駆者で、5億年後の宇宙生命体をテーマに伝統文化の現代アートへの応用研究もしているアーティスト。
ウォーレンさん曰く「CGアーティストの先駆者として国際的に高く評価されています。先ほどのORLANもそうでしたが、河口洋一郎も70代です。NFTアートやメタバースというと、若い人にしかわからないのではないかというイメージを持たれる場合も多いようですが、制作者達は年齢に関わらず可能性がある手法とあれば積極的に取り入れていますので、受け取る側も年齢は関係ないのではないかと思っています。確かに生まれた時からiPadがあったようなデジタルネイティブな世代は、よりナチュラルになじめるかもしれません。反面、彼らはまだ、作品を購入する資金がそれほどありませんので、やはり経験も資金も豊富な世代の方々にも積極的に楽しんでいただけるようなキュレーションをしていきたいと思います」。

ウォーレンさんが活動拠点としているシンガポールでは、すでに幅広い年齢の人々がNFTアートを楽しむ状況にあるそうです。日本ではまだ「どうやって買うの?」から始まる人が多いとのこと。とはいえ「新しい物を楽しみたい」という意識が高い人々が多いのも日本の特徴だと彼は捉えていて、そういう意味で受容が進むポテンシャルは大いにあると言えるようです。

河口洋一郎作「Growth Festivalシリーズ」のNFT作品。550万円。

先述のような大御所だけでなく、新進若手のNFT作品も魅力的です。
私が1番興味を持ったのは、ELISA INSUAの作品。まずモザイク柄の植物のようなオブジェが床に点在していて綺麗。中をよくよく覗いてみると、なんとカラフルな砂糖菓子がいっぱい詰まっているではありませんか!
可愛くて美味しそう!とワクワクしたのもつかの間、賞味期限切れの砂糖菓子が詰まったこのオブジェは、「商品化をする」という行為にまつわる問題に対し、「人の経済活動、過剰消費、貪欲さ、満足しきれなさと言うレンズを通して向き合った作品」とのこと。なので「満足感への誘惑を象徴」しているそうです。可愛らしいビジュアルのわりに難しい!
さらに、これらの造形の元になっているのが、世界有数の豪華な建築物として知られるムンバイの高級私邸や、ニューヨークのトランプタワーだそうです。これも意味深。。。詳しくは彼女も出演している会場のビデオを見てみてくださいね!なかなか説得力があります。
会場ならではの楽しめるポイントとしては、モバイルアプリを通したARの世界で見ると、このオブジェからにょきにょきにょきっと建物が成長して全体像が出来上がることです。
このリアルオブジェとARのセット、かなり魅力的!

ELISA INSUAの作品。363万円。
ELISA INSUAの作品からARの建物が立ち上がる。

会場にいらっしゃった倉田社長にも、シンワが手がけるNFTの特徴やこれからの展望について伺ってみました。

シンワ・ワイズ・ホールディングス社長の倉田陽一郎さん

倉田社長:
「美術を専門に扱ってきた当社ですので、文化的な内容のあるNFT作品を紹介していきます。今回は、デジタルアートのキュレーションなどを手がけてインターナショナルに活躍しているウォーレンさんをキュレーターに迎え、国内外から著名アーティストと新人アーティストの両方を招聘したNFTアートフェアとしました。ご覧になって分かる通り、キャンバスに描いた絵画や彫刻などのリアル作品と、それらと同じモティーフのNFT作品をツインでプレゼンテーションしているのも、ひと工夫した結果です。

私もNFT作品を何点か所有していますが、まずウェブ上に保管されているので、倉庫がいらないのが利点です。コレクターというのは飾り切れないほど作品を買ってしまうので、倉庫がいらないというのは重要なポイントです。
また、こうやってPCなどを開けて、見たいなと思った時にいつでも見られてニンマリできます。コレクターをときめかせる新しい所有の在り方や、ポータブルで動きのある新しい表現が生まれてきていると思います」

菊池:
「今年2月に開催した第一回目のNFTアートフェアも好評だったとのことですね。今年は、アートフェア東京や、タグボートのアートフェア、アートコラボレーション京都などでNFT作品の展示販売が増えてきましたが、御社の特徴はどのようなところにありますか?」

倉田社長:
「アートとしてのクオリティーが高いとご好評いただいています。ORLANさんや河口洋一郎さんなどは、既に美術館に所蔵されるようなクオリティーの作品を生み出しています。今回のアートフェアでも、一般のコレクターさんだけでなく、美術館にも購入していただけると良いなと思っています。福岡アジア美術館などは、デジタルアートの展示も積極的に実施していますので、可能性があると思います。また、チームラボなどは、自らのデジタルインスタレーション作品を展示する美術館を建設してしまいましたね。そういった意味でもこれからはクオリティの高いデジタルアートが美術館にアーカイブされていく時代だと思います。

それから、加山又造のような近代美術作家のNFT作品をエディションで販売するということも考えています。なぜ彼かと言うと、メトロポリタン美術館日本美術キュレーターのジョン・カーペンターも言っている通り、彼は江戸琳派の真の継承者だからです。北京の大学で美術を教えていた事もあり、意外と中国で彼を先生と慕っている人も多いのです。そんな彼の美術館を弊社が手がけているメタバース内の江戸の街(江戸バース)に作り、中に入ってNFT作品も観賞できるようにしたら面白いのではないかなど、いろいろな構想を練っているところです」

江戸バースについて詳しくはこちらの記事をお読みください

菊池:
「和紙や絹、岩絵具など素材が繊細であるために、持ち運びや長期展示に向かないものも多い日本美術。そんなハンディもあって、なかなか世界のアートマーケットで価値を上げることができなかった日本美術ですが、NFT作品として展示されたりコレクションされたりすることで、価値を上げていく可能性が開けるのかもしれませんね。リアルの世界とメタバースの世界双方のメリットを活かしつつ、美術の価値を上げていくシンワグループのチャレンジにこれからも注目していきたいと思います」

【NFTアートフェア開催情報】
開催期間:2022年12月12日(月)~2022年12月19日(月)
時間:11:00〜19:00
入場料:無料
展覧会URL:https://artweek.asia/
会場:Shinwa Gallery

住所: 〒104-0061東京都中央区銀座7-4-12銀座メディカルビル1F
電話番号:03-3575-5190
HP https://www.shinwa-artex.com/
主催:Shinwa ARTEX株式会社

アバター画像
評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

https://patronproject.jimdofree.com/

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