何億年も前にできた世界中の石の数々を研究して、「これだ」と思った石を彫って作品にしてきた絹谷幸太さん。
日本はもちろんのこと、中国、インド、ノルウェー、ブラジルなど、その石があるところに旅して向き合い、選び抜いてきた石の作品は、どれも最高の色と模様を開いてくれています。そして、様々な重要なメッセージを発信している!
今まさに展示中の最新作から聞こえてくるメッセージとは?
なんとか保たれている地球の均衡!崩れないで~!
地球とお月様が交互に積み重なっている?まるみを帯びてかわいいけど、おっとっと。。。思わず支えたくなるような!
《翠の地球》
美しいのに崩れそう!この危うさは、現在の地球の状況を表現していると絹谷さん。ブラジル滞在時に、焼き畑で瞬く間に森が消えていく様子を目にしているからこそ、急速に進む環境破壊をひしひしと感じるそうです。ずっと一定を保ってきた地球上の酸素量も、これ以上バランスがくずれると変化してしまう!「絹谷さんの作品は、なんとかバランスを保って大丈夫!と言ってくれてるのですよね?」すがるように尋ねた私ですが、「それは、これからの私達次第です」と絹谷さん。
先日閉幕した国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)でなかなかはかばかしい決議がなされなかった記憶も新しく、グレタさんの「美辞麗句ばかりで行動がない」という激しいスピーチもなまなましい。
絹谷さん作品は優しい雰囲気を醸し出しているけど、楽観的に「大丈夫」というメッセージを発信しているわけではないところが厳しい~。それだけ状況は切迫しているのだと改めて感じさせてくれました。
彫刻された石は、中国の大理石。艶やかな白に、爽やかな苔色の緑が美しい。「緑色の大理石ってあったのですね!」と聞くと、「世界でもとても珍しいです。でも、今回の表現にぴったりの緑色の大理石を中国で見つけることができました」とのこと。
石も意を決して絹谷さんの目の前に現れたのかもしれません。
このメッセージ、しっかり受け止めたいですね。
初めて彫られた「人」の字
今回たくさん出現して目立っていたのが、「人」の字です。
しかも、さかさまになっていたり、横になっていたり。
様々な石の模様の表面に、人々が迷走しているようにも見えます。
まずこの石は?模様は?
絹谷さん曰く「この石は、ブラジル・ミナスジェライス州 Salinas(サリナス)のかつて川で運ばれた石ころが何億年もかけて出来上がったものです。いろいろな石が多方面から運ばれ、寄せ集まり、長い年月をかけて変形して固まっています。その大きな原石の一面を磨いて3cmくらいの薄さでスライスし、良いなと思った模様の断面を作品にしています」。
なるほど~。なんか、いろいろな具が入った煮凝りのようにも見えてきました。よくよく見ると、今まさに融合しようとしている石達や、片方が変形してもう片方を受け入れている石などがあります。
「この石は、この石より柔らかいので、柔軟に形を変えて進出してきた石を受け入れています。この石はくっつこうとしていたり。そして、この辺りはいくつかが寄せ集まってアヒルのように見えます。そしてアヒルの口からは吹き出しが!」などと、絹谷さんの想像は無限に広がります。
感動したのが、「石は喧嘩をしません。互いにゆずりあって平和です。人間もそこから学んでいきたいなという想いを込めて「人」という字を彫りました」という彼の言葉。
29年越しの想いが形に!ノルウェーのピンクの石!
今回のハイライトとなる石は、「ノルウェーの薔薇」と名付けられた美しいピンク色の大理石。29年前にお父様に同行してノルウェーを訪れた際に惚れ込んだけれど高くて手に入らなかった石。その後様々な研鑽を積んだ絹谷さんに、ついにチャンスが訪れて今回作品にすることができたという感慨深い石。
それにしても、混じり合うピンクと若芽のように爽やかな緑が本当に美しい!少し葉が出てきた日本の葉桜のようです。
このピンクの石を彫刻した作品を3点ご紹介します。
①波打つ波動は、ピアノの音色《幸運の波動》
《幸運の波動》
この作品は、絹谷さんがお好きな、ある著名ピアニストの演奏を聞きながら制作したという、リズム感あふれる作品。
なんと、そのピアニストご本人が会場を訪れて、迷われた末に購入なさったとのこと!「この作品からエネルギーを得てまた更なる高みを目指したい」とおっしゃったそうです。ステキですね。
1000万年のサイクルで巡る宇宙の波動を全て取り込んでいるとも言われるこの約10億歳のピンク大理石に、ピアニストの波動が加わり、その作品からピアニストがまたエネルギーを得て新しい波動を生み出す。それを聴いた絹谷さんが、また新しい波動を石に刻み込む。。。まさに《幸運の波動》ですね!
②ダイニングテーブル!
なんと、ダイニングテーブルの作品が登場しました。絹谷さんも、初めてトライしたとのこと。なぜかというと、今回の展覧会は、芸術一家の絹谷家のみなさんがそれぞれ作品を展示しているファミリーの展覧会だから!
家族の展覧会ということで、みなが一緒に楽しむ場を想像して、ピンク大理石でダイニングテーブルを創ってみたそうです。絹谷さんのやさしさあふれるハッピーな作品。その名も《フィヨルドの灯り》。
光栄にもテーブルにつかせていただき、私は食前の祈りをささげました。
③コロナ禍を吹き飛ばす女神
ピンク大理石から生まれた大作がこちら!
色も形も優しいながら、独特の存在感を放っています。
見たことのない形。。。
絹谷さんによると、この彫刻は、「今回の世界的な感染症は、ある意味、ウイルスを通しての地球からの警告です。自分(自国)のことしか考えてない人が多すぎる現代社会への警告です。
例えば、アマゾンの森林を焼き払って生態系を大きく壊して、お金になる植物を植えるなどの政策は世界的です。アマゾンなどにいる多くの動物とコロナウイルスと共生していることは大いに考えられます。
ウイルスは大昔からいたので、石たちにとっては珍しくない存在だと思います。
ウイルスが生きていくには、何かの生物と共生する必要があるので、いつも適当な相手を探していると思います。
たまたま21世紀は人類が主な相手ですが、人類がいなかった中生代には恐竜だったかもしれません。誰も指摘していませんが、恐竜の絶滅はコロナのようなウイルス感染症だったかもしれません。
当時のことをよく知っている石に聞いてみたいと制作中ずっと考えていました」とのことです。
それを乗越えられるかどうかは、これからの私達次第。
乗越えられるよう、警告とともに応援の光を送ってくれているのがこの彫刻です。彫刻の頂上からは、金の光がふりそそいでいます。
みなさん、是非共に乗り越えていきましょう!
絹谷さん(右)と筆者(左)
【展覧会基本情報】
KINUTANI~芸術家の系譜~
会期:2021年11月10日(水)~11月23日(火・祝)
時間:10時~20時 *最終日は18時終了
会場:伊勢丹新宿店 本館6階 アートギャラリー
*伊勢丹新宿店の営業日、営業時間、イベント等が変更・中止になる場合がございます。事前に伊勢丹新宿店ホームページをご確認のうえご来店ください。
伊勢丹新宿店ホームページ
https://www.mistore.jp/store/shinjuku.html
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