Photo report「Your Neck in the Woods」木村太陽@ギャルリー東京ユマニテ 見た人:勝又公仁彦

2023年7月14日 観覧

鑑賞者や作家にとって、同時代において幾人かの見逃せない作家というものがいるだろう。私にとってそのような数少ない作家の一人。ただ、この10年は私が京都在住でもあり、情報もフォローしていないので見逃し続けている…(全然ダメじゃん)。が今回はタイミングよく拝見できました〜888888。

 

キレとユーモアと毒にますます磨きと偏屈さ?いや正当な違和感の提示が加わって期待を裏切らない内容になっていました。

音を(また、ある種の「音」や「声」あるいは「語り」の孕む暴力性について)視覚化する試みについても。

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ギャラリーのサイトより

https://g-tokyohumanite.com/exhibitions/2023/0703.html

木村太陽 KIMURA Taiyo
Your Neck in the Woods
2023.7.3(月)‐7.22(土)
日曜日、7/17(月・祝)休廊 10:30-18:30

木村は1995年創形美術学校研究科卒業後から作品を発表し、2000年以降はドイツ、ニューヨークを拠点にヨーロッパ、アメリカなど国内外で活躍。現在は神奈川を拠点に活動をしています。何気ない日常の中で出会う些細な違和感、群集心理や潜在意識の中にある感覚をユニークな視点で捉え、立体、インスタレーション、映像など多様なメディアを駆使した作品を構築してきました。

顔を寄せ合うお面を付けた少女たち、触れ合うほどの距離で耳元にささやく生々しい口元、ガスマスクから吐き出される無数の棺、くり抜かれたファッション誌からのぞく夥しい数の女性の眼など、木村の作品はいつか夢で見たようなつかみどころのない違和感と現実が入り混じった光景を映し出します。「自身のうちにある茫漠としたものを形にしようとしている」と語る木村の見ている夢を共有しているような感覚に浸るうちに、鑑賞者自身の深層心理があぶり出され、無意識のうちに蓄積された価値観や思い込みの中を生きてきたことに気づかされるかもしれません。

本展は、映像と立体、大型のモビール作品、版画用の石板に描かれたドローイングなど、約10点の新作による構成となります。ユーモラスでありながら不気味さも併せ持つ木村の作品をお見逃しなく、是非ご高覧下さい。

 

〈作家コメント〉


迷路のような古ぼけたアパートにみんなで住んでいる。
それぞれがそれぞれの狭い部屋で大騒ぎ。誰も独りになれない。

しかし騒ぎ声がどうもいつもと違う。
向こうの部屋で誰かが燃え出したようだ。
ここではどんな考えであろうと、一度囚われたら
人は燃えてしまう。しかも火に触れずとも他の人にもすぐに燃え移ってしまう。

逃げても逃げても、燃えた連中が追ってくる。
陽気な踊り子たちも燃え出す。
焦ればあせるほど、体が言うことを聞かず
這いつくばって後ろ足を踏み締めることしかできない。

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木村太陽website

https://www.taiyokimura.com/

木村太陽Youtubeチャンネル

https://www.youtube.com/@taiyokimura

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評者: (KATSUMATA Kunihiko)

早稲田大学法学部卒業、インターメディウム研究所修了。幼少時より音楽と文章制作に注力。大学在学中からさらに絵画、写真、映像などの作品制作に移行。国内外で様々な職業に従事した後、発表を開始。インスタレーションから出発し、主に写真を中心とした映像メディアで作品を制作。多様な被写体と実験的な手法により、日常の内に現象しながらも知覚されることのなかった世界を掬い取ることで、観る者を新たな認識へと誘う。歴史・社会・文明への批評的な暗喩を込めた作品展開を続けている。近年は医療や環境をテーマとしたインスタレーションの一方でパフォーマンスも行う。
主な展覧会に「写真の現在2 —サイト— 場所と光景」(東京国立近代美術館、2002年)「都市の無意識」(同、2013年)「あいちトリエンナーレ2016」(岡崎康生会場、「トランスディメンション —イメージの未来形」2016)。主な受賞に「日本写真協会新人賞」(2005年)。主な作品集及び編著に『Compilation of photo series until 201X Vol.1』(Media Passage、2018)、『写真2 現代写真 行為・イメージ・態度』(京都芸術大学東北芸術工科大学出版局、2021)。

http://www.kunihikokatsumata.com

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