自分だけど友達?!菅実花が生んだクローン女子達はフレンドリー☀どうやって創るかも聞いちゃった

薄暗くファンタジックな空間に、電飾看板のように光る写真がズラリ。
まずはその写真に登場するお洒落でかわいい「女性達」に視線を奪われます。

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第15回 shiseido art egg 展示風景

「女性達」と言いましたが、よく見ていくと、みんな同じ顔をしている!
1つの写真に双子のように同じ顔、同じファッションをした女性が居るのもあれば、1人は鏡の中にしかいなかったり、1人は画家のもう1人のモデルをしていたり、何重にも入れ子状態になっていることに気づいてきます。

そして、「あ~、これは今回の作品を展示している作家さん自身なのかな~」と感じ始めるころに、「なんか、ここに写ってる女性達、いやにツルンとしてるな」とまた気づく。
ここで、「もしかして、この写真に写っているのは人間ではないのでは?アンドロイドみたいに表情がなかったりする。でも、これは人間っぽい」と、不思議な感覚が次々と芽生えてきます。

それはそうと、この世界観好きだな~。
なんか、外界からは切り離された秘密のマンションで、お気に入りのインテリアや植物に囲まれて自分と遊んでいるみたい。

戸棚をバーカウンターにして一杯のみながら語らったり、1人をモデルにして描いたり写真を撮ったり。。。時間を忘れてハマっていきそう。
なんて考えていたら、目の前にご本人が!

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菅実花さんと作品

似てる~。当たり前か!早速いろいろ聞いちゃおう。
「写真のポートレートは、髪型もメイクも服もお洒落ですね。自分がトライしたいファッションにしているのですか?」と聞くと、

「先に、できることの制限が多い人形から作ります。例えば、髪型は、構造上額を出したワンレンスタイルにできないので、必ず前髪があるスタイルにします。また、人形は首のところに継ぎ目があるので、それが見えるようなアップスタイルとかはできません」と菅さん。

自分ありきで人形をそれに合わせるのかと思ったら、逆!

「写真は撮影してもらうのですか?」と聞くと、

「全て自分で撮影します。表情や位置関係など全て自分でコントロールします。なので、シャッターを押すボタンを持っている方の手は通常写さないのですが、この作品は、敢えて少しその手を見せています」と菅さん。

え~っ!自分でこんなにかっこよく撮れるんだ!でもそうか、セルフポートレートだから、自分で撮らないと意味が変わってきてしまうのですね。

「照明が紫や緑色なのも、ミステリアスな異世界のようで魅力的ですね」と私。

「実際の照明がこの色をしているのではなく、カメラにフィルターを付けて色を変えています。このアトリエは、もともとラブホテルだった場所なので、内装は独特です」と菅さん。

なるほど~。ところで、前方のギャラリーに目を向けると、居心地の良さそうなインテリア空間があります。

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第15回 shiseido art egg 展示風景

中に入って、くつろぎたくなるようなセッティング。
この場所が面白いのは、先ほど見た写真の中に出てきたのと同じ椅子や植物や鏡が置いてあるということ。
そして、それぞれのアイテムが2対あるのですが、全然違うメーカーのものをネットで見つけて購入したのだとか!この椅子2脚、同じものにしかみえませんよね~。
このセッティングに自分も紛れ込み、ますます写真の世界と現実の世界、いる―ジョンと自分がまぜこぜになってきます。

そこに、更に追い打ちをかけるように出てくるのがこのボックス。

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第15回 shiseido art egg 展示風景

菅さんらしき女性がボックスの上側に写り、先ほどのインテリア空間にゴーストのように浮遊しています。
なんなんだこれは~?!たたみかけるように現実とイリュージョンへの問いかけを投げかけて来る菅さんてすごいな。

「これは、19世紀から西洋で演劇などで用いられてきた、舞台に幽霊を出現させる装置です。」と菅さん。

「どこで手に入れたのですか?」

「自分で作りました。こういうのは得意ではないので、板から買ってきて試行錯誤。ねじでくっつけようとしていたら、テーブルまでくっついちゃったり(笑)。作り方は、ハロウィンでこの装置を作った海外の方のyoutubeを参考にしました。」と菅さん。

なんか、夜な夜な地下室で実験道具に囲まれながらサプライズを生み出している錬金術師に見えてきました。

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菅実花さんと作品

作品に囲まれて菅さんとお話していると、このギャラリー自体も作品で、自分も取り込まれているのではないかと思えてきます。

実際、菅さんは今回、ギャラリー全体を巨大な万華鏡にしたとのこと。
「やられた~」既に彼女の術中にはまっていたのでした。知らないうちに、会場にある遠華鏡(テレイドスコープ)に自分も写り、会場に映し出されていました。

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第15回 shiseido art egg 展示風景

もはや虚実の区別がつかない!そもそもはっきりさせる必要があるのか?と思わせてくれます。おどろおどろしいようにも聞こえるかもしれませんが、なんとも心地よいのですよ。ここでは、オリジナルもコピーも、お友達になれるのです。

【展覧会基本情報】
第15回 shiseido art egg
会期: 菅 実花 展:2021年10月19日(火)~11月14日(日)
会場:資生堂ギャラリー

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評者: (KIKUCHI Maiko)

アーティストと交流しながら美術に親しみ、作品の鑑賞・購入を促進する企画をプロデュースするパトロンプロジェクト代表。東京大学文学部社会学科修了。
英国ウォーリック大学「映画論」・「アートマネジメント」両修士課程修了。
2014年からパトロンプロジェクトにて展覧会やイベントを企画。2015年より雑誌やweb媒体にて美術記事を連載・執筆。
特に、若手アーティストのネームバリューや作品の価値を上げるような記事の執筆に力を入れている。

主な執筆に小学館『和樂web』(2021~)、『月刊美術』「東京ワンデイアートトリップ」連載(2019~2021)、『国際商業』「アート×ビジネスの交差点」連載(2019~)、美術出版社のアートサイト 「bitecho」(2016)、『男子専科web』(2016~)、など。

主なキュレーションにパークホテル東京の「冬の祝祭-川上和歌子展」(2015~2016)、「TELEPORT PAINTINGS-門田光雅展」(2018~2019)、耀画廊『ホッとする!一緒に居たいアートたち』展(2016)など。」

https://patronproject.jimdofree.com/

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